出産を終えたお母様方は、待望の赤ちゃんを迎え、授乳やオムツ替えに追われる一方で母になった喜びを実感されているのではないでしょうか。
お母様の体力の回復には、1ヶ月ほどは無理をせず過ごしていただきたいと思いますが、その間に、是非、取り組んでいただきたいのが「ワクチンスケジュール」を立てること。
出産後にお住まいの自治体に出生届けを出すと、予防接種の案内書が手渡されます。
万が一、生後1ヵ月以上たっても案内書を受け取っていないという方は、自治体等に問い合わせをしてください。ワクチンスケジュールを立てるに当たり、不安を感じるお母様も多いと思います。
この記事では、ワクチンの必要性と注意すべき点と踏まえ、詳しく解説いたします。多くのお母様に参考にしていただけると幸いです。
■なぜ予防接種が必要なの?
生まれたての赤ちゃんはお母さんからもらった免疫に守られていますが、その免疫は強力なものではなく、約半年ほどで無くなってしまいます。
赤ちゃん自身の免疫機能が働き始めるのは1歳を過ぎてからと言われ、その期間に細菌やウイルスに感染すれば重症化や死に至る可能性もあります。
そのため、そういった可能性が高い病気をワクチンによって予防することが重要なのです。
例えば、定期接種の一つであるポリオワクチンは、感染すると腸で増殖し、脊髄の一部に入り込むと、主に手や足に麻痺があらわれ、その麻痺が一生残ってしまうことがあります。
一度、麻痺が起きると回復が難しい怖い感染症です。
日本でも1940年代頃に全国に感染が広がり、1960年には北海道を中心に5,000名以上が感染する大流行となりました。当時の日本政府は、その状況をなんとかしようと、海外で使用されていたポリオワクチンを緊急輸入し、子供たちに一斉投与するとポリオの大流行は収束しました。1980(昭和55)年の1例を最後に日本でのポリオの感染はありません。
しかし、世界では、未だ、ポリオが流行している国があり、ポリオに感染した人によってポリオウイルスが日本に持ち込まれる可能性があり、ポリオワクチンの接種が行われていなければ、再び大流行が起きる危険があります。このようにワクチンによって感染を未然に防ぐことは、赤ちゃんが健康に育つ上で非常に重要です。
■定期接種と任意接種、臨時接種の違いは?
従来の予防接種は、「定期接種」と「任意接種」の2種類があります。
皆さんもご存知の通り、現在は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが続く非常時であり、状況に応じ「臨時接種」が追加されています。
①定期接種
国が接種を勧奨したワクチンのことで一定の年齢になったら、市町村が接種を行います。決められた期間内であれば、原則、定期摂取のワクチンは、無料で受けることができます。
②任意接種
希望者が個別に医療機関で接種するワクチンが任意接種です。基本的には、ワクチンの費用は自己負担ですが、自治体によっては助成金が出る場合もあるため、お住まいの市町村にご確認ください。おたふく風邪やインフルエンザワクチンは、任意ではありますが小児科学会が接種を推奨しています。
③臨時接種
現在、私たちが経験している新型コロナウイルによるパンでミッックでは、流行状況によってワクチンの接種が勧奨されます。現時点では、新型コロナワウチンの接種対象は、満5歳以上となっています。
■ワクチンの種類
ワクチンには、生ワクチンと不活化ワクチンの2種類のタイプがあります。
①生ワクチン
生ワクチンは、生きた状態のウイルスや細菌を弱毒化し製剤としたワクチンです。生ワクチンには注射と経口タイプがあります。
・注射生ワクチン
麻しん風しん混合ワクチン・水痘ワクチン・BCGワクチン・おたふくかぜワクチンなど
・経口生ワクチン
ロタウイルスワクチンなど
②不活化ワクチン不活化ワクチンは、ウイルスや細菌という病原体の生物学的な活性を化学的な処理を行い、無くしたものが不活化ワクチンです。代表的なものは、ヒブワクチン・小児用肺炎球菌ワクチン・B型肝炎ワクチン・4種混合ワクチン・日本脳炎ワクチン・季節性インフルエンザワクチンなど。
■ワクチンの接種間隔
①注射生ワクチン
注射生ワクチンを接種した後、他の注射生ワクチンを接種する場合、27日以上の間隔を空ける必要があります。
②経口生ワクチン、不活化ワクチン
他のワクチン接種後に間隔を空ける必要はありません。
■ワクチンは、かかりつけ小児科で
ワクチンは、種類によって接種する年齢や回数・間隔が異なります。
赤ちゃんにあったワクチンスケジュールを立て、もっともよいタイミングで接種できるようにしましょう。
そのために重要なことは、赤ちゃんの普段の様子を理解し、気軽に相談できるかかりつけの小児科医を持つことです。
産後のお母様方は、体力の低下などもあり、外出が大変だと思います。
そういった背景から、近年、産婦人科で赤ちゃんの予防接種を行うというケースが散見されます。
しかし、医療において乳幼児を含む子供は、『小さな大人ではない』と表現され、同じ治療に対しても年齢が小さければ小さいほど、反応や結果が異なる傾向にあります。
一般にワクチン接種は年齢によって接種時期が推奨されていますが、実際のワクチン接種の前には、小児科医が診察をしっかりと行い、健康状態に異常がないことを確認し、接種を進めるべきです。
また、万が一、ワクチン接種によって副反応が起きた際にも、小児科医でなければ適切な判断を行うことができない恐れもあります。
かかりつけ医のもとで赤ちゃんにとってベストなタイミングでのワクチンスケジュールを立てることが安全なワクチン接種を行う上で重要です。
ワクチンスケジュールを立てることがうまくできないという方は、是非、当院にご相談ください。
理事長 小暮裕之