医療コラム(花粉症について)

この医療コラムを読んでいる皆様、こんにちは。私は有明みんなクリニック 有明ガーデン院で耳鼻咽喉科の常勤医を務めている那須野 智光です。今、このコラムを書いているのは1月末なのですが、そろそろ当外来に「鼻水が出てくる」「目が痒くなる」といった訴えで受診される方が多くなってきました。そうです、あの花粉症のシーズンに入り始めてきたのです。そこで今回はこの「花粉症」という病気についてお話しをしてみようと思います。

花粉症とはどういう病気か? それは「花粉が原因のアレルギーで起こる病気の総称」です。では、ここで用いられている「アレルギー」とは何か? これは詳しく説明するとそれこそ一冊の本になってしまいますので簡単にお話ししますと、「免疫反応に基づく生体に対する全身的または局所的な障害」のことを指します。なんだか逆に難しくなってしまったような気がしますね。ここでは「免疫」≒「病気を引き起こすウィルスや細菌などの『異物』から体を守る仕組み」であり、それが過剰に働いてしまった結果引き起こされた症状、と言うことにしましょう。そして花粉症の場合、その「花粉」が異物ということになります。
ではこのアレルギーによる反応とは実際には一体どのようなものなのか? 花粉症の主な舞台である「鼻」を例にしてお話ししてみましょう。

スギやヒノキの花粉といったアレルギーの原因物質(アレルゲン、と言います)が鼻腔内の粘膜に付着し、内部に侵入するとそこに存在するリンパ組織などから抗体(IgEと言うタイプです。血液検査でその量を調べることができます。ご希望の際にはぜひご相談ください)が作られます。そしてその抗体は肥満細胞という細胞の表面に結合します。そうなった状態で再びアレルゲンが鼻粘膜内に侵入すると、それは肥満細胞表面上の抗体と結合し、肥満細胞からヒスタミン、ロイコトリエンを主とする多くの化学伝達物質が放出されます。これらの化学伝達物質が花粉症の鼻症状を――詳しく説明しますと三叉神経終末を刺激することでくしゃみを、腺分泌と血管透過性を亢進させることで鼻汁過多を、そして血管拡張と血管透過性亢進による間質性浮腫(むくみ、です)で鼻閉を――引き起こすのです(なお、眼の症状も同様の仕組みで生じると思っていただいて結構です)。これが花粉症の生じる仕組みです。

ここまで少し、話が長くなってしまいました。それでは、皆様にとって一番重要と思われる治療方法についてお話します。
まず、アレルゲンである花粉を回避する、という方法があります。花粉の飛散情報に注意し――スギ科は晩冬~春、ヒノキ科は春、イネ科は晩春と初秋、ブタクサは晩夏~秋に花粉が飛散します――飛散量が多い日には外出を控えるとともに窓や戸を閉め、外出時にはメガネとマスクを着用し、帰宅時には衣服や髪をよく払ってから入室するようにします。
 また、当クリニックではこれがメインの治療になりますが、薬物を使う方法があります。使う薬物の種類として抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬といった、上でお話した肥満細胞から放出されるヒスタミン、ロイコトリエン等の化学伝達物質の、各種組織との結合を阻止することで症状を改善させるタイプのものがあります。また、鼻内に直接噴霧することで炎症を抑え、症状を改善させる鼻噴霧用ステロイド薬といったものもあります。皆様のお悩みの症状をお話しいただけたら、それに合ったタイプの処方をいたします。
 なお、花粉飛散前でも症状が少しでも出た場合、また症状がなくとも花粉飛散開始時から治療を行うことで症状の発現時期を遅らせ、そしてその重症化を抑制することができます(初期療法、と言います)。花粉症シーズンの早めの受診、お勧めいたします。
 他にも花粉症についてお話しするべきことはたくさんあると思いますが、今回はここで終了とします。
 花粉症でお困りの方、ぜひ当クリニックを受診してください。力になります。

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